目次
クラミジアとは?
性器クラミジア感染症はクラミジア(Chlamydia trachomatis)が性行為によって感染する病気です。

クラミジアは主に泌尿生殖器に感染します。
男性では尿道炎と精巣上体炎を、女性では子宮頸管炎と骨盤内炎症性疾患(pelvic inflammatory disease:PID)を発症します。
また男女共通として「のど(咽頭)」や「肛門」にも感染します。
日本国内はもちろん、世界的にみても最も多い性感染症になります。
男女ともに症状があまりない、または無症状であることが理由の1つです。
尿道炎の原因としてクラミジアに次いで多いのが、淋菌、M.genitalium(マイコプラズマ)、トリコモナスになります。

症状のない20代男性に対して尿検査をしたところ、クラミジアの陽性率は4~5%であったと報告があります。
女性においては妊婦検診でクラミジアの陽性率は3〜5%であったとされます。
とりわけセックスパートナーが複数いる10代の女性の感染率は25%ときわめて高いです。
このように自覚症状のない感染者はかなりいます。
感染していることに気が付かないため、どんどん感染が拡大してしまいます。
最近では「いつ」「誰に」うつされたのか感染経路不明なケースも増えてきています。
感染に気が付かずに放置すると、男性では陰嚢が腫れる精巣上体炎になってしまうことがあります。
女性では不妊症の原因となることがあり、非常に深刻な病気であるといえます。
クラミジアの症状は?
男性では
- 尿道からサラサラの「うみ」がでる
- パンツが「うみ」で汚れる
- おしっこを出すとき痛い
- 尿道に違和感がある
- 尿道がかゆい
- 無症状のことも多い(約半数)
クラミジア性尿道炎
男性のクラミジア性尿道炎は、感染後1~3週間で症状が出る(発症)とされています。
しかし、症状がほとんどでない場合も多く、感染に気が付かないこともあります。
同じく尿道に炎症をおこす性感染症として淋菌性尿道炎があります。
淋菌性尿道炎と比較して発症までの期間(潜伏期間)が長く、発症も緩やかで、症状が軽いことが多いとされています。
| 性交渉~ | 膿(うみ) | 痛み |
---|---|---|---|
クラミジア | 1~3 週間後 | うすい サラサラ | 弱い |
淋菌 | 2~7 日後 | 濃い どろどろ | 強い |
クラミジア尿道炎の尿道からの分泌物はサラサラ(~ややネバネバ)で量も少なめです。
排尿時の痛みも軽い場合が多く、尿道の「かゆみ」や「違和感」程度のこともあります。
無症状の場合には感染状態を放置してしまうことになります。
クラミジア性精巣上体炎
クラミジアが精巣上体へ侵入し、精巣上体炎(たまが腫れる)になることがあります。
通常はたまが腫れる前に尿道炎の症状があります。
しかし、特に症状がなかったのに精巣上体炎になってしまうこともあります。
高齢者の精巣上体炎の原因は「大腸菌」であることが多いです。
しかし、中年以下の精巣上体炎は性感染症である「クラミジア」がほとんどです。
「大腸菌」による精巣上体炎と比較して、あまり発熱しないこともあります。
よくある受診のきっかけエピソード

昭島 太郎 28歳
Taro Akishima
エピソード
2週間前に会社の飲み会があった。酔いもまわり、強引な同僚に誘われるがまま性風俗店にいった。性風俗店では本番行為はなくオーラルセックスのみだった。1週間ほど前から尿道に違和感を感じる。尿道が「かゆい」感じがする。最初はあまり気にならなかったが、徐々に症状が明確になってきた。尿道からのサラサラとした液体が出てきてパンツに染みができるようになった。もしかしたら性病かもと思いつつも、少し様子をみていた。しかし、自然には改善する気配がないので、本日「あきしま駅前泌尿器科内科」を受診した。尿検査をしたところ「クラミジア陽性」であった。

立川 次郎 35歳
Jiro Tama
エピソード
1年間の妊活をへて妊娠することができた。妻から定期妊婦検診で「クラミジア陽性」とでたから、自分も検査にいって欲しいと言われた。自分自身は特に症状はないが、念のため「あきしま駅前泌尿器科内科」を受診して検査をしたところ「クラミジア陽性」だった。「いつ」「誰から」感染したかは見当がつかない。
女性では
- 無症状がほとんど(5~8割)
- おりものがふえる、性交痛、不正出血など
- 感染がすすむと下腹部痛(骨盤腹膜炎)
- 不妊症
- 子宮外妊娠
- 流産・早産
報告にもよりますが、女性のクラミジア感染症の約半数以上が無症状です。
妊婦検診またはパートナーの感染をきっかけにして発見されることが多いです。
クラミジア性子宮頸管炎は感染から1~3週間で発症します。
子宮頸管炎の症状は、おりものが増える(帯下増加)として出ることがあります。
他にも不正出血、性交痛などがあります。
子宮に侵入したクラミジアは卵管をへてお腹の中(腹腔内)にまで浸透します。
これにより子宮付属器炎や骨盤内炎症性疾患(pelvic inflammatory disease:PID)を発症します。
お腹の中に侵入したクラミジアの菌量が多いと、強い下腹部痛を引き起こすします。
無症状であっても卵管炎が持続することによって卵管障害と癒着がおこり、受精卵が上手く移動できなくなります。
それにより「不妊症」や「卵管妊娠(子宮外妊娠)」となります。
妊婦では羊膜炎の影響で子宮が収縮し、流産・早産につながります。
また赤ちゃんへ産道感染を起こし、新生児結膜炎や新生児肺炎を発症させます。
骨盤だけにとどまらず腹部全体に感染が広がると、
肝臓の周りで急性かつ劇症の肝臓周囲炎(Fitz-HughCurtis症候群)をおこします。
このように無症状ながら進行すると非常に重い病気になってしまいます。
しっかりと検査をおこない、無症状のクラミジアを発見していくことが大切です。
よくある受診のきっかけエピソード

昭島 花子 23歳
Hanako Akishima
エピソード
少し前に彼氏から「性病かもしれないと」連絡があった。彼氏とは4週間前に性行為があった。自分は特に症状はない。いわれてみれば「おりものが少し増えた」気がする程度である。昨晩、一足先に受診した彼氏から「クラミジアが陽性」であったと連絡がきた。やはり自覚症状はないが、「あきしま駅前泌尿器科内科」を受診することにした。膣内の分泌物を検査したところ「クラミジア陽性」であった。

多摩 昭子 29歳
Akiko Tama
エピソード
結婚してすぐに妊娠した。定期妊婦検診で主治医より「クラミジア陽性」といわれた。クラミジアといわれても特に自覚症状はなかった。夫からうつされた可能性もあるため、夫も検査に行くよう促した。「あきしま駅前泌尿器科内科」で検査したところ、夫も「クラミジア陽性」だった。夫は「いつ」「誰から」感染したかは見当がつかないと言っている。もしかしたら結婚前の元カレからうつされていた可能性もある。最終的には感染経路は不明のまま。
クラミジアの検査方法は?
クラミジアの検査は核酸増幅法である Real-Time PCR 法などによって行います。
PCR法は感度も特異度も高く、適切に診断をすることができます。
当院でもこのPCR検査をおこなっています。
検査結果はおよそ5日後にでます。
クラミジア性尿道炎は淋菌性尿道炎と同時に感染することがあります。
淋菌性尿道炎の20~30%にクラミジアも同時感染していたと報告があります。
典型的な症状はあるものの、症状だけで完全に判別することはできません。
以上のことから当院ではクラミジアと淋菌の同時検査をおススメしています。
性器クラミジア検査
男性は尿(尿検査)をとらせていただきます。
直前に排尿せずに来院ください。
女性は専用の綿棒で膣内の分泌物をとらせていただきます。
綿棒の挿入は女性看護師がサポートします。
生理中の検査は難しいことがあります。
妊婦の方は婦人科での検査をお願いします。
咽頭クラミジア検査
紙コップ半杯のお水で15秒間しっかりと「うがい」をしていただきます。
吐き出した「うがい液」を検査にだします。
肛門クラミジア検査
専用の細い綿棒を肛門に数センチ入れさせていただきます。
検査は男性医師または女性看護師がおこないます。
ご自身で綿棒を挿入いただいても問題ありません。
クラミジアの治療方法は?
抗生剤(飲み薬)で治療していきます。
マクロライド系・キノロン系・テトラサイクリン系の抗生剤を使用いたします。
一部の抗生剤は効果がありません。
飲んでいただく薬の種類によりますが、1~7日間程度の内服になります。
現時点で薬剤耐性(抗生剤に強い)クラミジアの感染拡大はありません。
しかし、短期間の再感染や上手く抗生剤を飲むことができないことによる治療失敗もあります。
適切に抗生剤を飲み切ること、再検査でクラミジア「陰性」を確認することが大切です。
またパートナーも一緒に検査・治療を行うことも大切です。
治療・検査費用の目安(保険診療)
症状がある場合には保険診療(自己負担3割)での検査・治療になります。
検査+処方箋料
初診料+検査代+処方せん料の目安になります。
検査項目数によって料金は変わります。
目安:合計2,600~3,800円
再検査
再診料+検査代の目安になります。
検査項目数によって料金は変わります。
目安:合計600~1,800円
お薬代
保険診療なので処方せんをお近く薬局へ持参ください。薬局でお薬代が発生します。
自費診療
無症状の方、保険証を使用せずに検査・治療をうけたい方は自費診療になります。
料金の詳細は以下よりご確認ください。
当院受診から完治までの流れ
クラミジアは抗生剤で治療をすることができます。
しかし、抗生剤に強いクラミジアの報告があります。
およそ1割弱の方で最初の抗生剤だけでは完治しない場合があります。
症状がなくなっても、クラミジアが残っている可能性があるのです。
しっかりと完治したところまで確認することが一番大切なことです。
以下に完治するまでの大まかな流れを紹介させていただきます。
STEP
初めての受診
当院に受診されたら尿検査をさせていただきます。
クラミジア以外も疑わしい場合は他の性感染症も検査いたします。
クラミジアの検査結果がでるまでに数日かかるので、症状によっては治療を開始します。
STEP
結果説明
最初の受診から1週間後を目安に受診いただきます。
検査結果の確認と、クラミジアであれば抗生剤治療を開始いたします。
クラミジア以外にも感染していた場合には、同時に治療を開始いたします。
STEP
陰性確認検査
治療開始から3~4週間を目安に再診いただきます。
早期に再検査をしてしまうと、「偽陽性」となる場合があるため、治療から一定期間空けての再検査となります。
症状が改善しているかの確認とクラミジア陰性確認のための尿検査を実施いたします。
STEP
結果説明
クラミジアが「陰性」になっていることを確認いたします。
万が一、「陽性」であれば追加の抗生剤治療を開始いたします。
クラミジアの予防方法
性器クラミジア感染症は、クラミジアが性行為により感染する病気です。
自身の感染予防だけでなく、大切なパートナーにも感染させないように予防しましょう。
セックスをしない(NO SEX)
極論ですが、セックスをしなければ感染しません。
このノーセックス(NO SEX)も大事な選択肢の一つになります。
安全なセックス(SAFE SEX)
不特定多数とのセックスはやめましょう。
今現在は特定のパートナーしかいなくても、以前にセックスした経験があれば、感染の可能性はあります。
- 二人とも感染していないこと
- お互いに他のセックスパートナーがいないこと
これらが確認できれば、二人のセックスは安全なものになります。
新しいパートナーができたら性病検査に関して話し合いましょう。
より安全なセックス(SAFER SEX)
コンドームを使うことで感染のリスクを減らすことができます。
コンドームは感染している人の精液や膣分泌液が、口や性器の粘膜に直接触れることを防ぎます。
正しいコンドームの使用方法を身につけましょう。
性感染症のリスクがあるオーラルセックスやアナルセックスでもコンドームを使用しましょう。
もちろん100%予防はできませんが、現時点では一番効果のある方法です。
参考文献
Takahashi S, et al.:Incidence of sexually transmitted infections in asymptomatic healthy young Japanese men. J. Infect.Chemother., 2005 ; 11 : 270繰 273.
JAID/JSC 感染症治療ガイドライン 2018
日本性感染症学会誌 性感染症 診断・治療 ガイドライン 2016
この記事を執筆した人

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