急性膀胱炎
症状
Symptom
- おしっこをすると痛い
- おしっこに血がまじる
- おしっこが残る感じ
- 下腹部が重い感じがする
- トイレの回数が多い(頻尿)

急性膀胱炎とは?

膀胱炎は陰部周辺の細菌が尿道から膀胱へ入り、膀胱の粘膜に炎症をおこす感染症です。
膀胱炎のほとんどは大腸菌、黄色ブドウ球菌が原因になります。
ストレス、不適切な生活習慣、免疫力の低下、妊娠などが原因となることもあります。
20代~30(性活動増加)や閉経後(膣内の細菌叢変化による)の女性が非常にかかりやすい病気です。
とはいえ、その他の年代の方々もまんべんなくかかるので「全ての女性を悩ませる病気」といってもよいでしょう。
もともと尿はきれいな「無菌」です。
尿の量が少なかったり(脱水症)、トイレを我慢して尿をためていると体外から入ってきた細菌が膀胱の中で繁殖してしまうのです。
水分のあまりとれず、自分のタイミングでトイレに行けないような仕事をされている方にとっては職業病といえます。
例えば販売員、看護師、保育士、美容師、客室乗務員の方などです。
市販薬も販売されていますが、膀胱炎を根治させるものではないです。
膀胱炎を放置すると、重い感染症(腎盂腎炎)や尿路結石の原因になります。
おかしいなと思ったら早めに受診してください。
急性膀胱炎の検査は?
尿検査・尿培養検査
残尿測定検査
1.尿検査・尿培養検査

ばい菌(細菌)がいないかをチェックします。
尿中に白血球(ばい菌と戦う細胞)がいる場合は感染をおこしている証拠です。
- どんな細菌がいる?
- どんな抗生剤が効く?
を尿培養検査で調べます。
培養の結果は1週間程度でわかります。
2.残尿測定検査

おしっこをした後、
どれくらいの尿が膀胱の中に残っているか(残尿量)を測定します。
高齢者や妊婦の患者様は1回でおしっこを出しきることができないことがあります。
お腹の手術(大腸や子宮など)後の方も同様に注意です。
残尿量が多いと、ばい菌(細菌)を殺しきることができません。
残尿量が多い患者様には治療薬や一時的な尿道カテーテル留置をおすすめすることもあります。
膀胱炎を短期間に繰り返している場合にもチェックしましょう。
急性膀胱炎の治療法は?
1.抗生剤(飲み薬)

抗生剤で膀胱炎のばい菌(細菌)を殺します。
たまに抗生剤よりも強いばい菌(細菌)が原因のこともあります。
これは「耐性菌」と呼ばれます。
その場合には処方された抗生剤を飲んでも良くなりません。
初診時に尿培養検査で効果の高い抗生剤を調べています。
再診時にも症状が残っている、または感染が持続している場合には抗生剤を変更する必要がります。
膀胱炎の予防法は?

よく「膀胱炎はクセになる」といわれます。
たしかに何度も繰り返される患者様はいます。
しかし、クセになるというよりは生活習慣が関係していることが多いのです。
生活習慣や行動を変えないと、膀胱炎を繰り返すことになります。
改善のポイント
- おしっこを我慢しない
- 水分をよくとる
- お尻は前から後ろへ拭く
- ストレスをためない
- 睡眠をしっかりとる

急性腎う腎炎
症状
Symptom
- おしっこすると痛い
- 熱がある
- 身体がガタガタ震える
- 腰がずっしり重い
- 背中(左右どちらか)を叩かれると響くように痛い

急性腎う腎炎とは?

腎う腎炎とは腎臓の「腎う」に炎症が起こることをいいます。
細菌が腎臓まで到達して炎症をおこす感染症の1つです。
腎臓から分泌された尿の受け皿にである「腎う」に感染を起こすので「腎う腎炎」と呼ばれています。
多くは膀胱炎を放置したことで発症します。
膀胱の中で繁殖した細菌が、尿の通り道(尿管)を逆行して悪さします。
腎臓が感染すると発熱や悪寒など激しい症状を引き起こします。
早期に発見して治療をうけることで軽快します。
放置してしまうと命の危険がある重症感染症へ発展することもあります。
おかしいなと思ったらすぐに受診しましょう。
急性腎う腎炎の検査は?
尿検査・尿培養検査
採血検査
超音波検査
1.尿検査・尿培養検査

ばい菌(細菌)がいないかをチェックします。
尿中に白血球(ばい菌と戦う細胞)がいる場合は感染をおこしています。
- どんな細菌がいる?
- どんな抗生剤が効く?
培養検査の結果は1週間程度でわかります。
2.採血検査

感染症がどれだけ悪いかを採血検査で調べます。
腎盂腎炎は血液中に細菌がめぐる重症の感染症になることがあります。
重症の感染症が疑われる場合には速やかに入院が必要になることもあります。
3.超音波検査

腎臓の形を超音波で調べます。
腎臓でつくられた尿は、尿管を流れて膀胱内にたまります。
尿管がつまると膀胱へ尿が流れません。
つまらせる原因第1位は尿管結石です。
尿管がつまると腎臓でつくられた尿が流れるとができないので、腎臓が腫れてきます。
これを水腎症とよびます。

水腎症の腎臓に腎盂腎炎が起きると、
通常の抗生剤治療では効果が足りません。
これを結石性腎盂腎炎とよびます。
手術(尿管ステント留置術・腎ろう造設術)が必要になります。
急性腎う腎炎の治療法は?
1.抗生剤(点滴&飲み薬)
ばい菌(細菌)を殺す抗生剤を使います。
感染の程度が軽ければ1日だけ抗生剤の点滴、
翌日から飲み薬(内服薬)の抗生剤を2週間ほど飲んでいただきます。
感染の程度が重い場合には毎日抗生剤の点滴が必要になります。
その場合には入院をおすすめします。

急性腎う腎炎の予防法は?
急性腎う腎炎の多くは膀胱炎が悪化することによっておこります。
様子をみたり、市販薬で一時的に改善したようにみえても注意が必要です。
膀胱炎であれば内服薬(抗生剤)で治療することが可能です。
しかし、腎う腎炎は入院・点滴治療が必要になることもあります。
また基礎疾患をお持ちの方やご高齢の方においては命の危険がある病気です。
気が付いたら急激に悪化しているにも急性腎う腎炎の特徴です。
残尿感、血尿などの膀胱炎症状が出たら速やかに医療機関を受診しましょう。
過活動膀胱(OAB)
症状
Symptom
- 最近トイレの回数が多い(頻尿)
- 夜中に何度もトイレへ
- 急な尿意
- 水仕事中におしっこに行きたくなる

過活動膀胱とは?
膀胱が過敏になっている状態です。
そこまで尿がたまっていなくても膀胱が収縮してしまいます。
その結果、急に尿意を感じたり、何回もトイレへいきたくなります。

- 尿意切迫感
- 切迫性尿失禁
- 昼間頻尿
- 夜間頻尿
上記が過活動膀胱の代表的な症状です。
40歳以上の日本人の約8人に1人(12.4%)が過活動膀胱の症状をがあるといわれています。
患者数は推定1,000万人にもなります。
年齢とともに症状が出てくることから、膀胱の加齢現象といって良いでしょう。
しかし、トイレの問題は生活の質を大きく下げます。
年のせいだからと諦めずに、気軽にご相談ください。
また、年齢の他に高血圧、糖尿病、脂質異常症、メタボリック症候群といった生活習慣病も過活動膀胱の原因となることも知られています。
適度な運動や生活習慣の見直しをすることも大切です。
参考文献:本間之夫ほか:日本排尿機能学会誌:14(2):266, 2003
過活動膀胱の検査は?
尿検査
残尿測定検査
質問票
1.尿検査

過活動膀胱と膀胱炎は症状が似ています。
まずは尿検査では尿にばい菌(細菌)がいないかをチェックします。
白血球(ばい菌と戦う細胞)がいる場合は膀胱炎をおこしています。
膀胱炎がある場合、まずは抗生剤の治療が必要になります。
2.残尿測定検査

おしっこをした後、
どれくらいの尿が膀胱の中に残っているか(残尿量)を測定します。
残尿が少ない場合は過活動膀胱を疑います。
患者様によっては残尿が多いので、トイレに行く回数が増えていることもあります。
これは神経因性膀胱という病気です。
過活動膀胱とはちがう治療が必要です。
3.質問票

過活動膀胱の程度を質問票で調べます。
治療前後でくらべることで、治療効果を判定することもできます。
重症度 | 点数 |
---|---|
軽症 | ≦5点 |
中等症 | 6~11点 |
重症 | ≧12点 |
過活動膀胱の治療法は?
1.飲み薬(内服薬)
膀胱の筋肉をやわらげる(弛緩させる)効果のある飲み薬を飲みます。
筋肉がやわらぐことで、おしっこを貯めることができるようになります。
それによりトイレに行く回数がへります。
また膀胱の神経を麻痺(まひ)させる効果もあり、急にトイレに行きたくなる(尿意切迫感)症状の改善が期待できます。
一部のお薬には副作用として、
口の渇き(口渇感)や便秘があります。
適切なお薬の種類と用量を症状に合わせて相談しましょう。
2.漢方薬
錠剤が苦手な方には漢方薬をおすすめすことがあります。
症状によっては錠剤とあわせて飲んでいただくと効果的です。
漢方薬をためしてみたい方はいつでも気軽に相談ください。

過活動膀胱の予防法は?

肥満や喫煙、飲酒といったいろいろな生活習慣が過活動膀胱に関係しています。
生活習慣の改善も必要になります。
神経因性膀胱
症状
Symptom
- おしっこの勢い弱い
- おしっこの回数が多い(頻尿)
- おしっこが出せない
- おしっこが漏れる(失禁)

神経因性膀胱とは?
排尿にかかわる行動は2つあります。
- 尿をだす
- 尿をためる
この単純な2つ行動に対して様々な神経が複雑に関わっています。
脳から脊髄、末梢の神経にいたるまで。
いまだに全てのメカニズムが解明されているわけではありません。
関わる神経のどこかに異常をきたすと、「尿をだす/ためる」がうまくできなくなってしまいます。
これを神経因性膀胱とよびます。
異常のある神経の場所で分類することができます。

神経にダメージをあたえる原因
- 中枢性排尿障害:脳血管障害、認知症、パーキンソン症候群、多発性硬化症など
- 脊髄性排尿障害:外傷性脊髄損傷、頸髄症、脊髄腫瘍、胸腰髄部脊髄髄膜瘤、二分脊椎症、腰部脊柱管狭窄症、腰椎椎間板ヘルニアなど
- 末梢神経性排尿障害:糖尿病、直腸癌、子宮癌など骨盤内腫瘍の術後、馬尾腫瘍など
神経因性膀胱の検査は?
残尿測定検査
尿検査
1.残尿測定検査

おしっこをした後、
どれくらいの尿が膀胱の中に残っているか(残尿量)を測定します。
神経因性膀胱はおしっこを出すための神経(脳~脊椎~膀胱)に異常があり、おしっこ上手く出せない状態です。
1回でおしっこを出しきることができないため、トイレに行く回数が増えていることになります。
2.尿検査

神経因性膀胱と膀胱炎は症状が似ています。
尿検査では尿にばい菌(細菌)がいないかをチェックします。
尿中に白血球(ばい菌と戦う細胞)がいる場合は膀胱炎をおこしています。
膀胱炎がある場合、まずは抗生剤の治療が必要になります。
神経因性膀胱の治療法は?
1.飲み薬(内服薬)

おしっこの通り道(尿道)をひろげる効果のある薬を飲んでいただきます。
尿道がひろがることで、たまっていたおしっこがスムースに流れます。
おしっこをしっかりと出しきれることで症状がやわらぎます。
それでもスムースに出せない場合には膀胱の収縮をたすける薬を追加して飲んでいただきます。
2.自己導尿
ご自身またはご家族で尿道にカテーテル(管)をとおしてもらいます。
カテーテルから膀胱内にたまっているおしっこを出します。
カテーテルは清潔なものを使います。
とてもやわらかく身体に優しい素材なので尿道を傷つける心配も非常に少ないです。
自己導尿の詳しい方法はクリニックの医師または看護師が指導させていだたきます。
※日本ベクトン・ディッキンソン株式会社HPより
3.尿道カテーテル留置

常にカテーテルを尿道へいれておきます。
カテーテルから出たおしっこは専用のバックに流れていきます。
自己導尿できない方はこの方法です。
長期間留置は感染症をおこします。
そのため1カ月毎にカテーテル交換する必要があります。
当院でカテーテル交換可能です。
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